僕がブラジル音楽に興味を持ったのは高校生の頃でした。
丁度ギターを始めて3〜4年の頃、たまたま家にあった小野リサのCDを何気なく聴いて、気づけば何度も聴くようになっていました。それまで聴いた事のないような沢山の種類の音が耳に飛び込んできて、その雰囲気に惹かれていっていました。当時聴いていた、JPOPやロック、フォークとは別の魅力を感じていたのかもしれません。
その後ブラジル音楽を演奏するようになって、それまでの自分の音楽観が根底から覆される経験を何度も味わっているのですが、「楽器」についても衝撃的でした。
楽器というと「ピアノ」、「ギター」、「フルート」等、音楽を演奏をする事が目的で作られた道具の事がまず浮かぶと思いますが、ブラジル音楽ではwikipediaでの言葉を借りるとすると「広くは音を出すことができるものすべて」という言葉のほうが当てはまる気がします。なので、フライパンや、そろばん、机、空き缶、枝、、、、、、。身の回りにあるもの全てが楽器という事になります。身の回りで音がでないものを思い浮かべる方が難しいですね。
この事はブラジル音楽に限った事ではなくて、インドやアフリカ、中国、東南アジア、中東、、世界中の音楽でも当てはまる事だと思います。生活に根付いた音楽の場合、生活の中から音が生まれているとも言えるかもしれません。アメリカにもstompのように本来楽器ではないものを使った演奏が人気ですね。
「身の回りにあるもの全てが楽器」。僕にとってはとても衝撃的な事でした。
ただのソロバンやプラスチックケースが、とても豊かな音楽を奏でているのを目の当たりにして、自分の内側に美しい音楽があれば、それを伝える道具の選択肢はとても広がるという事が実感として理解できました。
この考え方によって楽器の演奏能力を高める為にとても有効な練習をする事ができます。
元々音楽を演奏する為に作られた道具は、ある程度練習すればその音がでますが、演奏目的でない道具を音楽として聴こえさせるにはあらゆる音楽的スキルをフル稼働させなければなりません。道具のどの部分をどのような力で、どのように触れるか、そのタイミングは。。。。自分とその道具への理解を深めなかればなりません。
練習をやり続ける事で自分の中に音楽を演奏するための基礎力みたいなものが生まれてきます。また道具に対する洞察力も深まっていきます。
ブラジルではサッカーが盛んですが、ここ最近まで、殆ど道ばたをグランドに、石ころをボールに見立ててのストリートサッカーが行われていたそうです。
デコボコの足場で、小さな的を正確に蹴るという行動が、あの素晴らしい技術を生んでいたのだと思います。
そんな人達にとっては、整備されたグランドで、大きいボールを扱うのはとても簡単な事に感じられるのかもしれませんね。
楽器も同じ事が言えると思います。
一見すると恵まれていないように思える環境が、実はとても理想的な環境になり得るというのはとても面白いですね。
ぜひ今日から、身の回りの道具を楽器として見てみて下さいね!